矢野龍王

□ 箱の中の天国と地獄 謎解き脱出系作品に期待していた通りの出来映え あらすじ  極秘施設に閉じこめられた6人の男女、脱出するには運に頼るしかないのか、それともどこかに ヒントがあるのか。命を賭けたゲームが開幕する!  作者の矢野龍王さんの「極限推理コロシアム」読んではいませんでしたが、評判を聞いてい たので本作品を買うことにもためらいがありました。しかし、個人的に謎解き脱出系作品が好 きということもありますが買って正解といえる内容だったと思います。 サスペンス色がほとんどを占めていて、ほんの少しをミステリ色が占めているといったと ころかと思います。  寝る前に少しだけ読もうとしたのに最後まで一気に読んでしまいました。次々と新たな局面 に移り変わり、中だるみをすることもなく最後まで緊張を保ち続けました。  追い詰められた状況で人々が見せるいらだちや怒り、悲しみなどもこのジャンルに期待して いた通りで良かったです。欲をいえば期待以上の何かがあれば最高だったのですが、そこまで のものは残念ながらなかったです。オリジナルの飛び抜けた仕掛けもない代わりに、安心して 楽しめる作品だと思います。 ネタバレ  状況設定は映画「CUBE」、メイントリックは映画「ソウ」をかなり意識させるものでした。コピーというの とは違い、骨格を模倣して矢野龍王流に肉付けしたというところでしょうか。本作の方がうまく感じる部分も あればそうでない部分も多く見られました。「CUBE」や「ソウ」を初めて見たときのような驚きがなかったの は残念ですが、救いのある結末を迎えたのは良かったです。  表紙のトランクと作中でのトランクの扱い方はアンフェアだと思います。また、施設におけるトラップもど うやっているのか、仕掛けに腑に落ちない点があります。警報が鳴った後、自動でラベルか中身が変わったり していたのでしょうか……  結局、般若の面の男の目的が分からないままなのも消化不良でした。実験といったりゲームといったり、な ぜあんな所に隠れていたのか等不自然でその点ではすっきりしない終わり方でした。 ふくめん算解答  表紙の折り返しにあるふくめん算の解答です。久しぶりに数式に向かったからか多少時間がかかってしまい ました。  てんごくとて          952719 + じごくとて         + 62719 ―――――――    →    ――――――― とことんあける         1015438  これが正解だと思います。解くコツとしては、足し算なので繰り上がりは常に1であることと、同じ数を足した 場合に繰り上がりがないとき答えが偶数になることに気をつけることでしょうか。 極限推理コロシアム あらすじ  2つの館にそれぞれ強制的に集められた7人のプレイヤーに主催者は命じる。 今から起きる殺人事件の犯人をあてよ、と。2つの館で起きる事件をもう一方の館よりも 早く解かなければ待っているのは死。究極のサバイバルゲームが今始まる。  箱の中の天国と地獄がよかったので読んでみました。感想としては、読んで良かったです。 生き残るために知恵を絞り、仲間を疑いながらも協力しなければならない極限状況、 最高です。  寝る前に少し読もうと思っていたのに結局最後まで読み切ってしまいました。一気に読ん だせいかトリックについては別段疑問を持つこともなく読み終えました。  読み終わって冷静になると多少疑問に思うところが出てきたりしましたが……。 終盤での犯人の行動はよく理解できませんでした。  メイントリックについてもある程度予想したとおりでしたがこういうのもアリだと思います。 もう少し伏線がいろいろ張ってあったほうが良かった気もしました。その方が読み返してみた い気になったでしょう。  主催者のルールを吟味して推理したり隙を突いたりするという話、映画の「CUBE」とか 「SAW」が好きという人には文句なしにお勧めできると作品です。      時限絶命マンション 講談社ノベルス あらすじ  マンションの住民同士が殺し合う    がっかりする内容。極限推理コロシアムや箱の中の天国と地獄とは全くの別物。 登場人物が知恵を絞ったりもせず、疑心暗鬼に陥りながらも協力したりすることもなく ただ殺し合うだけの話です。  人形を押しつけ合うというゲームも地味でわかりにくかったです。   設定にも無理がありすぎるように感じました。極限推理や箱の中では主催者の正体や その組織などほとんど不明であるが故にゲームに対する説得力を生んでいましたが、 本作では主催者側を中途半端に描いたせいか、それはないだろうと言いたいところが 多いです。
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