北森鴻
□ 写楽・考
あらすじ
民俗学のフィールドワーク中に殺人事件に巻き込まれる!×3
憑代、湖底の遺跡、奇怪な祭祀、これらの謎を蓮丈那智が解決する。
民俗学者蓮丈那智シリーズ第3弾。
前回の『御蔭講』で登場した佐江由美子を蓮丈研究室の新たな仲間に加えて物語が展開します。
これまでは蓮丈那智に振り回されていた内藤三国ですが、本作からは佐江由美子にも振り回され
る事になります。2人に翻弄される内藤の様子は哀れです。
蓮丈那智の存在は限りなく神(作者)に近づいていて、もはや読者の側ではなく、森博嗣の
Gシリーズにおける犀川のような立場になっています。内藤(読者)にヒントを与え、最後に解決す
るだけの役割です。
前回まではどちらかといえば民俗学的謎が主で途中に起きる事件の謎が従という印象がありま
した。しかし今回はそれが逆転している感じがしました。事件の謎が今までよりも魅力的だった
こと、民俗学上の謎がいまいち興味が持てなかったことがそう感じた原因かと思います。
表題作が長い割にはいまいちだったのが残念でした。写楽・考というタイトルから、写楽につ
いてのあれこれが論じられるのかと思っていましたがほとんど話題になっていませんでした。
ただ、事件については一番本格ミステリしていたので、そこは楽しめました。