加納朋子
□ 螺旋階段のアリス 文春文庫
早期退職者支援制度を利用して私立探偵を始めた主人公、仁木順平(中年)。
彼の前に安梨沙という少女が助手として押しかける。
そして、不思議の国のアリスのキャラクターを投影した人物達が、様々な事件
を持ち込んでくる。7編の短編集。
「不思議の国のアリス」は大昔に読んだきりで、内容はほとんど覚えていませんでしたが、
都度説明があるので問題なく本作を読み進めることができました。
主人公の仁木はハードボイルド探偵を目指しているようなのに、持ち込まれる依頼は
期待とかけ離れた物ばかり。そういった時に見せる仁木の気持ちに笑いつつも哀愁を感
じて、ついつい感情移入してしまいました。
安梨沙の役所はアリスなのですが、ウサギの働きも多かったように思います。仁木を
事件へと導くウサギです。しかし事件への巻き込み方に出しゃばったところはなく、
とても楽しくストーリーを追うことができました。
他人から見れば些細な事件。しかしそれらの影にある人の心に気づくと、読む手を止
めて人物の気持ちに思いをめぐらせたりしました。
普段の生活でも、もう少し人の気持ちを考えてみようかなと思わせてくれる作品でした。
解説は柄刀一氏。解説の途中から続刊の「虹の家のアリス」から引用していたりして、
後半は参考にならないなと感じました。前半はなるほどと、とても参考になりました。
2009/10/09