伊坂幸太郎
■ 陽気なギャングが地球を回す 祥伝社文庫
4人の銀行強盗の手口と同じように無駄のない作品
ものすごくおもしろかった。こんなに愉快で気持ちよく、ページをめくる手が止まらない小説を読ん
だのは久しぶりです。
主役たちのやりとりがとてもよかったです。台詞回しや掛け合いなど、ユーモアたっぷりでニヤニ
ヤしっぱなしでした。こういうノリの非現実的な銀行強盗というのは見事に私の好みです。
4人それぞれが何らかの技術(嘘を見破る、演説、スリ、体内時計)の天才という設定ですが、その力
を炸裂させまくるというのではないところもよかったです。能力頼みで白けることもありませんでした。
作中で展開される騙し合いも予想通りな展開や予想を超えた展開が入り乱れ、ミステリ要素も十分に
あったと思います。
非現実的なのはどうしてもだめだという人以外は、勢いで最後まで一気に読んでしまいそうです。た
ぶん私にとってもこの先何度も読み返すことになるであろう作品です。
あまり深く考えずに楽しい小説を読みたい人にお勧めです。
■ 陽気なギャングの日常と襲撃 ノン・ノベル
前作同様のおもしろさと完成度の第二作
ギャングシリーズ二作目ですが、一作目があまりにもおもしろかったので正直不安でした。
しかし作品の完成度という点ではこちらの方が上だったと思います。
さりげなく張られた大量の伏線が終盤に向けて次々と消化されていく過程は読んでいて非常
に気持ちがよかったです。
ただ全体の勢いに関しては若干控えめでした。登場人物たちのやりとりは相変わらずユーモ
アが効いていて楽しめたのですが。
話の流れもだんだん能力や道具に依存してきている印象がありました。そのことについて登
場人物がメタな台詞で言い訳するのも醒めます。
とはいってもおもしろさ、ミステリ性は十分にあって、前作を気に入った方ならこちらも楽
しむことができると思います。騙されてください。