泡坂妻夫
■ 亜愛一郎の狼狽
亜愛一郎シリーズ第一弾。短編八つを収録。
泡坂さんの作品は「曾我佳城」以来です。一九七六年から一九七七年の作品だけあって文章が古くさく
感じてしまいますが、読み進めるうちにそれも味として楽しめるようになりました。
主人公の亜愛一郎がなかなかいい感じのキャラクターをしているのがよかったです。誰もが羨むような
外見をしていながら、挙動不審で頭がアレなよう。しかし、誰もがわからない謎をなんなく解いていくと
いうそのギャップが良いです。
他の登場人物たちもどこかとぼけた感じがするキャラが多くて、そんなに退屈することなく読み進める
ことができました。かといって不愉快なキャラクターもきちんと描かれていたと思います。
有栖川さんの国名シリーズの様にトリックに文章をつけただけという印象はあまりなく、トリックが物
語りの中にうまく調和していると感じました。
とんでもない驚きはなくてもいいので良質な短編を読みたいという方にお勧めです。