芦辺拓

探偵宣言 森江春策の事件簿  講談社文庫  あらすじ   血塗られた時計塔の悲劇、飛翔する死体、謎めいた血文字等、7つの事件。  時間も場所も異なるこれらの事件を森江春策が解決していく。  そしてたどり着いた真犯人とは?  短編集ではままあることですが、それぞれの話が実は関連していたという展開が本作にも 当てはまります。しかし、そのことがあらすじの段階で明示されているということが、他にあ まりない趣向といえそうです。  文庫化にあたって各話に関連づけを行ったというから、短編掲載ごとに読んだ人向けの配慮 なのかもしれません。  それにしても、独立していた作品に後付で関連性を持たせ、1つの長編としてしまう技術は 流石としかいいようがありません。  トリックもそれぞれに特徴があり、飽きることはありませんでした。  作者が試行錯誤していた時期だからか、年齢がバラバラだからか、森江春策の人物像 が各話でかなり違っていて、そこも新鮮な感じで読むことができました。  作者の言う通り、森江春策は日本一地味な探偵の名に恥じない働きぶりで、探偵が出しゃば りすぎることがあまり好きではない人向けの作品。これからもこの探偵には地味に活躍して欲 しいです。 2007/8/26
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