芦辺拓
□探偵宣言 森江春策の事件簿 講談社文庫
あらすじ
血塗られた時計塔の悲劇、飛翔する死体、謎めいた血文字等、7つの事件。
時間も場所も異なるこれらの事件を森江春策が解決していく。
そしてたどり着いた真犯人とは?
短編集ではままあることですが、それぞれの話が実は関連していたという展開が本作にも
当てはまります。しかし、そのことがあらすじの段階で明示されているということが、他にあ
まりない趣向といえそうです。
文庫化にあたって各話に関連づけを行ったというから、短編掲載ごとに読んだ人向けの配慮
なのかもしれません。
それにしても、独立していた作品に後付で関連性を持たせ、1つの長編としてしまう技術は
流石としかいいようがありません。
トリックもそれぞれに特徴があり、飽きることはありませんでした。
作者が試行錯誤していた時期だからか、年齢がバラバラだからか、森江春策の人物像
が各話でかなり違っていて、そこも新鮮な感じで読むことができました。
作者の言う通り、森江春策は日本一地味な探偵の名に恥じない働きぶりで、探偵が出しゃば
りすぎることがあまり好きではない人向けの作品。これからもこの探偵には地味に活躍して欲
しいです。
2007/8/26