蒼井上鷹
□ 九杯目には早すぎる FUTABA NOVELS
全体的にいまいち楽しむことが出来ませんでした。
特にショートショートでは、肝心のラストに切れ味というものが欠けていました。
読み終わって、「これはこういう落ちなんだろうな、たぶん」といった読者の好意的解釈
がないと成り立たないような内容だったと思います。これはショートショートとして問題
があるのではないかと思います。
短編の方も時間軸を狂わせている話が多くて読みにくく、混乱しました。話の中で最も
不思議だったり、緊張感のあるシーンを冒頭に持ってきて、そこから時間を戻すというの
はどうも私には苦手な構成です。
ただ、その冒頭もそれほど印象的でもないため、それより退屈な本文を読み進めるのに
は面倒ささえ感じました。テンポのいい文章でなければ読むのをやめていたかもしれません。
そういう意味では、読ませる力みたいなのはあったといえそうです。
それでも、「おっ」と思えるトリックがあったのが救いでした。しかし地味な事件ばか
りだったような気がします。似たような話を少しずつ変えて何回も読んだような感覚に陥
りました。
この作者は「人をイライラさせる人物」を書くのが非常にうまかったです。作中の人物
だけでなく私も相当イライラしました。そういう人物に振り回される主人公を見て、この
もどかしさがたまらない、という読み方が出来る人なら楽しめる内容かもしれません。
<ネタバレ>カラクリリリカル 「九杯目には早すぎる」 蒼井上鷹
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